進出企業インタビューINTERVIEW

長野県の持つ全国各地へのアクセスの良さと、優れた技術を持った
地元企業との協力で事業を展開

サンゴバン株式会社

諏訪工場 工場長 柳沢 謙一 氏

原村

今回インタビューに対応していただいた工場長 柳澤 謙一様。物腰の柔らかい方で、インタビューは終始穏やかな雰囲気の中で行われました。

1992年4月に東京都の立川から長野県諏訪郡原村に工場を移転したサンゴバン様。東京から移転したことにより全国各地のお客様へ製品を配送しやすくなり、また優れた加工技術を持つ地元の企業との協力など様々なメリットが得られたそうです。

Q1

長野県へ進出するまでの経緯

元々弊社は米国のノートンという会社(後にフランスのサンゴバン社により買収)の機能樹脂部門で、当時欧米中心であった機能樹脂製品のアジア地域での売り上げ拡大、地域ごとに異なる顧客ニーズの対応拡充を目指して1978年に日本へ進出し、東京の立川に工場を新設いたしました。

ところがその立川の工場があった工業団地が多摩都市モノレール建設工事で閉鎖になるとのことで、どこか良い場所に移転できないか、となったのが移転までの経緯です。

-ちなみに「サンゴバン(Saint-Gobain)」という社名は会社が創設された地、北フランスの村の名前が由来だそうです。

Q2

長野県に進出を考えた理由

立川の工業団地が閉鎖になる話が出た当時、タイミングよく原村が諏訪南インター原村工業団地を造成し、工場の誘致をしていたため、そのお話をお受けしました。

長野県に決めた主な理由としては物流面のアクセスの良さです。

我々のビジネスはいくつかの製品群に分かれており、お客様も日本全国各地に点在しているのですが、この工場のすぐ近くには諏訪南ICがあり、ここから中央道を通って行けば、名古屋方面にも東京方面にも行ける便利な場所であろう、という点が大きかったですね。

別の移転候補地として新潟県も検討していたのですが、降雪量と全国への物流網を考慮した結果、長野県に決めました。

また元々精密産業が盛んだった諏訪地域には、小物部品の製造や金型の加工技術を持つ優れた企業が多く存在していることも原村への移転を後押ししました。

実際に移転後は金型製造や部品加工など高い技術をもった企業とのパートナーシップにより、自社で賄えない部分をうまく補って事業展開ができています。

-長野県が持つ物流面でのアクセスの良さ、諏訪地域の優れた加工技術を持つ企業の存在、また積雪も少なく日照時間も瀬戸内海と並んで多い地域(出典:気象庁ホームページ https://www.data.jma.go.jp/nagano/shosai/kikou/kikou.html)であることが移転の決め手となったそうです。

Q3

長野県への進出による効果

あくまでも弊社の例ですが、地元で採用した従業員の方は素朴で真面目な方が多いため離職率が低く、皆さんには長く働いていただいています。

また、地元出身者以外に登山やハイキング、ウインタースポーツが好きで地方移住を考えていた独身者の方や、自然豊かな環境でお子さんを育てたいという子育て世代の既婚者の方たちと工場の立地がマッチし、Iターン就職でも優秀な人材の採用ができています。

ここ最近ではワークライフバランスを重視される方もいらっしゃいますし、そういう意味では良い環境が長野県内はどこに行っても揃っています。

-長野県は「移住したい都道府県ランキング15年連続日本一((株)宝島社「田舎暮らしの本」(2021年2月号))」となるなど、移住人気も高いのですが、そのことが採用面でもプラスに働き、離職率の低さなどの企業業績にもプラスになっています。
 

Q4

外資系企業の方から見た長野県への立地のメリットは何ですか

通常、海外の方に日本の地域を説明する際にはまずアジアの地図を出し、日本の位置を説明して、それから地域を指さして「ここが日本の〇〇ですよ」という所から紹介を始める必要があります。

ですがほかの地域と異なり、長野県は「オリンピックが開催された地域」という世界的な知名度があり、ざっくり説明するだけである程度どんなところか理解していただけます。

また、長野県は都市部と比較し、土地代、賃料が非常に安いというメリットがあります。

都市部の港湾近くで倉庫を借りて物を保管するとどうしてもコストが高くなるため、大きなものをたくさん保管しなければいけないといった、スペースが必要な企業にとって長野県の「土地代が安い」というメリットは大きいと思います。

外資系企業は原材料などの輸出入割合が高いことが多いですが、国内で物を調達して加工して販売する業態であったり、付加価値の高いものを作って売る製造業であれば港や空港から遠いといったデメリットもそこまで影響しないのではないのではないでしょうか。

-長野県は隣接県と比較して「オリンピック開催地」という知名度があり、海外の方にもある程度認識されているようです。また、土地代、賃料代が安いことも魅力となっています。
 

Q5

地域貢献などの面ではどのようなことをしていきたいですか

1992年に原村へ移転した時は40名ほどでしたが、徐々に事業を拡大して成長してきていますので、引き続き継続して地域の雇用や発展に貢献できればと思っています。

そのために地元の企業との交流であったり、地元の学校からの「職場体験を受け入れてほしい」という要望も積極的に受け入れており、こうした活動を今後もどんどんやっていきたいと思っています。

また、CSR(企業が果たすべき責任)の部分でも社会貢献で何か我々ができることを考えていく必要もあると考えています。

-CSRという観点では、長野県はSDGs達成に向けて優れた取組を提案する「SDGs未来都市」として全国の都道府県で初めて国から選定されるなど、早くからSDGsの達成に向けた取組を積極的に推進しています。

Q6

最後に環境面での取り組みについて教えてください

地域貢献やものづくりだけではなく、サンゴバン全体として世の中の流れで求められているCO2削減などに対して社会貢献できる部分はないかと検討しています。

例えば、輸入販売しているとどうしても物流費がかかり、物流のためにCO2が発生するといった問題が起こります。今後は事業の成長とこうしたCO2の削減といった環境面での取組を両立させていきたいと考えています。

-企業においても環境に対する取組がますます求められるようになってきています。長野県では「2050ゼロカーボン」に向けて、工場などの立地の際にもZEBなどの二酸化炭素排出削減に資する規格に対応する生産施設を設置する際には助成率を引き上げるなどの支援を行っています。