進出企業インタビューINTERVIEW

長野の拠点新設によって流通・販売網の強化とコスト改善、
リスクヘッジを実現

株式会社パネックス

事業本部長 林 啓幸 氏

伊那市

今回インタビューに対応していただいた林啓幸様。インタビューには終始笑顔でお答えいただきましたが、一方で工場や製品に対しては非常に熱い思いを語って下さいました。

2017年12月に西の下関工場に次ぐ、東の製造拠点として長野県伊那市に製造工場を新設したパネックス様。
首都圏に近い長野に工場を新設したことで物流コストの改善や流通販売網の強化、また、製造拠点を分散することによるリスクヘッジなど、様々な経営効果があったそうです。

Q1

長野県へ進出するまでの経緯

パネックス様外観:駐車場に入った時点からすでにパンの甘い香りが漂っていました

弊社には元々2010年にスタートした下関工場があり、そこで製造したロングライフパンを西日本、九州や四国地域を中心に販売しておりました。

そこからさらに全国に販売網を構築・拡充していこうという計画になり、その中でやはり首都圏含めた関東地区への進出・商品供給というのは計画のメインになっていくだろうと。

計画当時はまだ下関工場から関東地区含めた全国配送が可能な時期ではありましたが、おそらく今後そういったことができなくなるだろうという懸念がありました。

というのも、ここ10年で社会や経済は大きく変わりました。

ECや個人宅向けの配達物量が急増し、人手不足が起こり、それに伴う物流コストの高騰、さらに原料の高騰や景気の問題。

そうした社会や経済の情勢変化といったものに弊社も対応していく必要に迫られました。

そうなると、どうしても下関工場の1拠点では全国へ商品を安定して供給するのが難しくなり、関東地区などへの安定的な供給、また、コストの改善やリスクヘッジを考えると関東に近い場所で新たな拠点が必要でした。

上記の理由からパネックス様は、2015年あたりから本社のある岐⾩の近隣で新たな拠点となる物件を探し始めたそうです。

Q2

長野県に進出を考えた理由

長野県は首都圏や岐阜の本社へアクセスしやすく、交通の拠点として非常に便利で、これが長野県での新設の大きな理由となりました。

長野県は主要幹線道路が通っていて、高速であれば中央道や長野道はもちろん、東名や第二東名に迂回もできますし、ここから直接関東に行くこともできます。

岐⾩の本社からも⾼速を使えば2時間程度で来ることができ、⾏き来もしやすい。

長野県は首都圏を中心とした販売エリアに⾏けて、何かあれば迂回して南や北からもいけるという形もでき流通の拠点としては最適だと考えました。

Q3

新設にあたって行政の方からも様々な支援をいただいたとお聞きしました

拠点設置にあたっては、物件探しの段階から行政の方にもご協力をいただいたほか、県の信州ものづくり産業応援助成金助成金(現在の長野県産業投資応援助成金)や市の優遇制度を利用させていただき、スムーズな事業展開が出来ました。

-伊那にはたまたま候補地の一つとして訪れたそうですが、工場として使う建物自体が非常に新しかったこと、その建物の管理をされている伊那市や長野県の方からも非常に熱心に誘致を頂いたことも理由の一つだったそうです。

Q4

工場新設後の効果についてお聞かせください

長野工場の製造の様子:長野工場の生産能力は1日9万個、下関工場の2倍だそうです

元々西日本の下関工場から関東地区への商品供給はあったものの、日本の東側、長野にもう 一つ製造拠点を持ったことで、2つの工場で供給範囲をカバーでき、全国への供給がよりスムーズになりました。

他にも製造拠点の点在化は経営リスクの分散にもなっていて、例えば拠点が1か所しかない場合、そこが災害等で被災してしまったら経営がストップしてしまう。

ですが拠点が2つある事で、1つの工場が被災してしまっても、もう一つの拠点で生産が続けられ、全国のお客様に商品をお届けすることができます。

またお客様に対しても、下関からではなく長野工場から短期間で届くということで注文自体もいただきやすくなり、新規顧客開拓も含めて売り上げは大きく増加しているそうです。

Q5

今回新設するにあたって人材面等で懸念されていた点があったとお聞きしました

作業の様子:現地採用にこだわり、働いている方のほとんどが地元の方だそうです

当初、長野工場で働いていただける人がどれだけ集まるかという懸念がありました。

というのも、「食品製造業は人を集めるのが難しい」とお話を聞いていたので、弊社でも「ではどうしようか」という話になっていたんです。

そこで2017年の8月くらいに工場の横に「社員募集中」と書いた大きな看板を立てさせていただいたり、会社説明会を開いたりといった人を集める工夫を行いました。

会社説明会開催前は「10人か20人くらいしか来ないのでは…」と心配しておりましたが、蓋を開けてみれば大盛況で、並べた椅子が足りなくなるほど多くの方に足を運んでいただきました。

将来的に地域の雇用含めて行政との連携強化をしたうえでの地域の活動促進、雇用促進に貢献し、地元に貢献できる企業を目指していきたいと思っております。

パネックス様では「地元の人たちを雇用して工場を運営できるようにしていこう」をモットーにしていて、現地採用で地域の雇用を促進し、地域に根差した企業として若い世代、次世代の方たちに「あのパン屋さんなんだ」という認識を持ってもらいたいとのことです。

Q6

長野県に立地してよかった点はありますか?

パネックス様で製造している製品:特に長野県産のリンゴを使ったリンゴジャムパンとアップルパイは非常に売れているそうです

長野県はアルプスの水やリンゴをはじめとした農産物など環境イメージが良く、セールストークとしても使え、商品や企業のイメージアップにもつながっています。
弊社の商品に長野県産のリンゴを使用したリンゴジャムパンやアップルパイがありますが、こちらは特に人気のある商品です。

このような長野県や伊那といった、地元の食材・特産品を使った商品を作れるのは大きなメリットです。

またパネックス様のロングライフのパンは今推奨されているSDGsの観点の中で「捨てない」という社会貢献にもつながっています。パネックス様では今後もこの製品を作り続けることで、地元だけではなく社会にも貢献できる企業を目指しているとのことです。