長野県産業立地ガイド2020
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リストラクションの必要日滝原の広大な用地に新工場株式会社コヤマ 須坂工場 [平成市坂須年2月操業開始]成熟産業の新たな展開 鋳造業は成熟産業といわれる。巨大な設備・ラインはほとんど自動化しており、海外に設備移転する例も多い。一方、自動車産業が進展する中で、エンジンやミッションなど、鋳造部品を多用する部位での需要は底堅く、とくにエコを意識したアルミ製の、しかも中子を用いた複雑な形状の鋳造部品の需要は増大している。これらを生産できる鋳造メーカーは国内に数社しかなく、そのひとつが㈱コヤマだ。 ㈱コヤマは昭和20年創業の鋳造メーカーだ。自動車や建設機械部品を中心に製造し、増産と技術革新が進む中、新技術の導入と設備の更新に積極的に取り組んできた。長野市内の本社・工場敷地は約8万㎡と有数の規模を誇る。しかし、アルミ鋳造の増産に伴い、既存のアルミ工場は手狭で、構内物流にも不便が感じられるようになった。 鋳造業は典型的な装置産業で、製造装置やラインの規模、重量はIT産業の比ではない。同社は思い切って鉄とアルミを二分することにし、アルミ専門の鋳造工場用地を須坂市日滝原に求めた。ここは一区画が広大で、地盤も強固、松川沿いの高台はよい風が吹き、眺めも最高だ。1年間の短期で工場建設、平成25年5月にはフル稼働に入った。社会貢献が製品開発の原点環境や交流から新発想が生まれる日置電機株式会社 本社および研究棟成平[ 市田上年4月完成]豊かな森が発想を喚起する 日置電機㈱は、第二次世界大戦の戦火を受け東京から坂城町に移転、さらに平成2年、上田市の現在地に移ってきた。これに先立ち、同社は工場用地に森を造成し、以来植樹を継続して今日みるような広大な工場公園が出来上がった。同社は、こうした緑化や環境活動のみならず、少年野球の支援、スポーツ施設の開放、小学校への楽器寄贈、理工系学生への奨学金支給など、社会貢献活動を積極的に進めてきた。 同社は、電気計測器の専門メーカーだ。電子部品・自動車・環境・新エネルギーなど多分野で技術革新が進む現在、計測器はより重要な役割を担い、同時に高精度化、効率化などが求められる。こうしたニーズへの対応は、同社の社会貢献活動と決して無縁ではない。社会に「あってよかった」と思われる会社、それが目標であり、開発の原点だ。 開発コンセプトを共有するため、本社に開発、生産、販売・サービスの全部門が集結している。2015年に完成した研究棟には、全技術開発部門がワンフロアに集結し業務に当たる。室内に注ぐ豊かな自然光と風による換気、窓の外には森が広がり、子どもたちの声が響く。そんな環境が、「何をどのように開発するか」、新発想を喚起することになる。理想の水がみつかった営業戦略的な工場でもある内堀醸造株式会社 アルプス工場 [平成町島飯郡那伊上年操業開始]理想の水と空気を求めて 創業明治9年の内堀醸造㈱は米酢や穀物酢をはじめ様々な酢を取り扱う酢の専業メーカーである。酢造りの基礎となる酒造りを重要な工程であると考え、「酢造りは酒造りから」の基本理念のもと、酒造りから真剣に向き合っている。微生物の力を借りる醸造にとって澄んだ空気、清らかな水を選ぶことは重要である。同社にとって飯島町はそれらの条件を満たす山脈に囲まれ、良質な水と空気のある理想の地であった。 水は単に清冽であればいいというわけではない。同社の酢の独特のまろやかさを醸すには、ある度合の軟水が絶対必要だった。同社は、岐阜県や長野県各地などを尋ね歩いた末、その理想の水を飯島町でみつけた。そこは独特の田切地形が続く天竜川の河岸段丘上、その地下150mを流れる中央アルプスの伏流水だった。 酢は酢酸発酵の過程で大量の空気を必要とする。伊那谷を吹き渡る風もまた、醸造には重要だった。中央アルプスの伏流水と標高740mの澄んだ空気。クリーンで衛生的、近代的な工場。この長野県への立地自体も、食品産業としての内堀醸造㈱の営業戦略上、大きな優位性を発揮するという。同社は、地域環境活動にも積極的に取り組む。HDD用スピンドルモータの最盛期を支える日本電産株式会社 長野技術開発センター駒ヶ根市 [平成21年5月移転新設]世界№1シェア製品の開発拠点 平成元年、日本電産は当時HDD用スピンドルモータで競合関係にあった飯島町の信濃特機に資本参加し、のちこれを長野日本電産、平成9年には、吸収合併して長野技術開発センターとした。平成元年当時、両社のこのモータの国内シェアは100%に近く、この地はHDD用スピンドルモータ技術の一大拠点となった。長野県の技術集積が世界へ HDD用モータの需要拡大と技術開発の高度化に伴い、平成21年5月に同センターは駒ヶ根市の現在地に移転新設された。ここでは、広大なスペースを活用して、当初HDD用スピンドルモータの研究・開発を行ってきたが、現在ではその要素技術を応用して、車載、物流省人化、5G化等にも拡がりを見せている。日本電産のグループ企業は県下に数多く立地しており、県下に集積された技術シナジーが、世界No.1の総合モーターメーカーである同社を技術面で支えているといっても過言ではない。 日本電産㈱(昭和48年創業)は京都に本社を置き、資本金878億円(2019年3月時)、世界各国にグループ企業300社以上、社員10万人以上を擁するグローバル企業だ。売上高は1兆5,000億円(2019年度、連結)を超える。主力製品はモータとその関連製品で、HDD用スピンドルモータや電動パワーステアリング用モータ等、世界シェアトップの製品を数多く持つ。21

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